ご挨拶

序. はじめに

 

平素より、優良家庭犬普及協会にご支援、ご指導を賜り、誠にありがとうございます。

昨年の7月より、前任の野田聖子先生を引き継ぎ、代表理事 会長を務めさせていただくことになりました佐良直美でございます。

 

本来であれば、副会長の石井ふく子先生に、会長をお引き受け頂きたかったところではございましたが、私の師でもある石井先生より、設立者でもあり、現場を良く知るものとして、役職員の陣頭指揮をとり、新たな取り組みをすべし、と厳命され、謹んで会長をお引き受けした次第でございます。

 

本来であれば、着任後すぐに、会員の皆様、並びにご支援をいただいております皆様に、拝眉の上ご挨拶をすべきところではございますが、当ホームページにてご挨拶申し上げますこと、お許しいただければ幸いと存じます。

 

1. 設立の経緯を改めて

 

当会は、1994年の設立から、既に今年で25年目を迎えますが、設立の当時はまだ家庭犬といっても、昔ながらの「外飼い」が多く、トイレの失敗をすれば、犬の鼻先をおしっこに押しつけて叩きましょうというしつけの教科書があったり、前へ前へと引っ張る犬は土佐犬でも繋ぐの?というような太い太い綱(リードというより)を上方に引っ張り上げて「首吊り状態」でお散歩をしている、かわいそうな犬も目にしたことがあります。

 

しつけ(トレーニング)においても、手に負えない困ったことがあれば訓練士さんのところに「預けて訓練してもらって」飼い主さんは特に何もしない方々も少なくなく、まして犬を連れて、一緒に旅行に行ったり、レストランやホテルに行ったりすることはとてもとても稀でありました。

あるいは、お家の中で飼っている方も「愛玩の対象」として、不適切な飼い方とも言えそうな、悪い意味での猫かわいがりしているご家庭も多かったように思います。

 

そんな中、私がテリー・ライアン先生と出会い、欧米各国では「飼い主がほめてしつけるトレーニング」が主流であることを知り、そしてテリー先生や当会の役員と一緒にアメリカンケンネルクラブ(AKC)のCanine Good Citizen Test を日本の環境に合わせた形にアレンジし、現在の「Good Citizen Test」を作り上げ、日本における飼い主と犬との関係をもっと良くしようと、当会を設立しました。

 

それからは、公益社団法人日本動物病院福祉協会(現 日本動物病院協会 JAHA)様と連動する形で、日本にテリー先生をお招きし、私が主宰する「Animal Fanciars’ Club」においてしつけ教室を開催したり、日本各地でのグッドシチズンテストを通じて、テリー先生の持ってきてくれる欧米諸国の最新の知識やトレーニングを、多くの飼い主の皆様と一緒にどん欲に学んでいたことを思いだします。

 

2. そして現在

 

平成が終わり、令和を迎えた 2019年。

日本の状況を見回せば、犬と私たちの関係は劇的に変わったように感じます。

 

「犬は家族の一員」という言葉が一般的となり、犬を外の鎖につないで飼っているという方が少なくなりつつあり、「動物の愛護および管理に関する法律(動物愛護法)」の中では、飼い主責任として終生飼養がうた明確にうたわれています。

共に生活するという意味では、ペットと一緒に住めるマンションや、ペットと泊まれるホテルやレストランなどが日本各地どこにでも見られるようになりました。

 

また、2011年に日本を襲った「東日本大震災」を契機に、その後も続く多くの災害においても「ペットの同行避難」ということが、自治体内での理解においてもスタンダードとなってきています。

 

日本でもペットが市民権をようやく獲得した時代、とも言えるかもしれません。

 

しつけやトレーニングにおいても、とても大きな変化を感じています。

何か犬(動物)に関する問題が起こった際に、これまでであれば「犬は所詮、犬だ。うちの困ったバカ犬が!」というような認識が、「困った行動をとる犬は、飼い主が悪いんだ」という意見が、犬を飼っていない方も含めた一般の方に、どんどん当たり前になってきていることを肌身に感じています。

 

トレーニングも、上手くできたら「ほめる」「ごほうびをあげて、その行動を繰り返すように教える」等が、一般的になってきていて、しつけだからといって、外で犬を叩いたり蹴ったりしたら、すぐ警察に通報されてしまうぐらい、飼い主の動物に対しての接し方への、社会の目が変わったのです。

 

そんな状況を思うに、まだまだ多くの課題が残っているとはいえ、設立当初に私たちが目指していた「犬と楽しく共生する社会」が25年経って、実現したのではないかと思っています。

そして、及ばずながら、当会もその中で役割を果たせたのではないかと自負しています。

 

3.これからのニーズ

             

先日テレビのワイドショーをたまたま観ていたら、親による子どもへの体罰や暴力が起こったという痛ましい事件の放送の中で、コメンテーターの1人が「ペットを飼っている人たちの中でさえも『体罰は、教育やしつけではない』と多くの人に考えられている」と紹介されているのを聞きました。

 

今後の国会内で政府与党が、相次ぐ児童虐待事件を受けて、親による子どもへの体罰の禁止などを盛り込んだ児童虐待防止法などの改正案を協議しているようですが、こうした子どもの教育における「体罰否定」の流れは、動物と飼い主間の「しつけ・トレーニング」にも次第に波及していくのではないかと考えています。

 

加えて、個人的には、「大きいモノから小さいモノ」「強いものから弱いもの」への力による根拠のない抑制は、いかなる理由であっても「暴力や体罰」であり、控えられるべきと考えています。

 

私が幼少時、馬と接する機会の中で、自分より大きな馬が、小さな私を威圧するかのように、後ろ足で立ち上がったり、恣意行動を見せると、決して私を傷つけようとしている行動ではないとわかっていても、とても怖く感じていましたし、同時に、自分より大きな動物がその力をちらつかせるだけで、小さくて弱いモノは、委縮してしまうことを学びました。その教訓は、自分たちより小さな動物たちに対して、私が同じようなことをしていないだろうかと幼いながらも、反省した強い記憶があります。

 

 

 

4.これからの協会

 

そして、当会として、今後どのようなことに取り組むべきかを考えています。

 

最近、ずっと犬を飼っていた80代の知人が、老いてもなお、(次の)犬を飼いたいという淡いけれど強い希望を持っていることを知りました。

 

高齢者とペット という課題について、社会的な関心は今後もますます高まっていくと強く思っています。

できることなら生涯、動物たちと一緒に暮らしていきたいというささやかな希望が、実現が難しい「夢」ではなく、一つの選択肢になるといいと思っており、そうした社会のニーズに合わせて、当会や当会関係者が果たすべき役割もあるの    ではないかと、とくに考えています。

 

 

設立から四半世紀。

小さい協会ながらも、ご支援いただいている会員の皆様や企業、学校の皆様と一緒に、日本の「犬と飼い主との関係性」を良くしてきたという自負があります。

 

元号も変わり来年にはオリンピックという状況で、さらに社会が大きく変わっていく中で、会員の皆様といっしょにこの協会がなすべきことを一生懸命やっていく所存であります。

 

そのために、ぜひ皆様からのお声を大切にしながら、皆さんと力を合わせて、この協会を作り上げたいと希望しています。

 

ぜひ今後もご指導ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。